〈コラム〉地域おこしとデザイン

地方では都市圏へ労働者が流れたりするなどして人口が減少し、産業が衰退、文化や伝統の継承ができないなどの問題が起き、
安倍内閣では地方創生を政策の一つとして掲げています。
以前、奈良新聞で私の地元である奈良とデザインなどについてお話しさせていただいた記事が掲載されました。
地域を活性化する上で、デザインに出来ることが実はたくさんあります。紙面で掲載いただいた内容に加え、感じていることを書きたいと思います。

地方にはそれぞれ地域特有の文化や産業があり、その土地でしか味わえないものや体験できないことが価値になると考えています。
その場所にしか無いからこそ行きたくなる、知りたくなる。そんな独自の魅力がブランドとなるのであって、
必ずしもおしゃれなファッションビルや最先端の技術が無ければ人が集まらないというわけではありません。

自らの地域の魅力は何か、その地域らしさとは何かをシンボライズすることが地域づくりを考える上で大切なことですが、
それをどのようにして見出し、発信していくのか。その考え、計画、行動も含めてデザインであると考えています。


例えば「誰に向けて発信するか」を考えた場合、改めて地元の人々に向けるのか、
あるいは観光客に向けるのかによっても作るものや伝え方は変わってくるはずです。
誰のためにこの商品はあるのか、そのパッケージやホームページはちゃんとその人に届いているのかを見つめ直してみると、
自分たちでも気づいていなかった価値が見えてくるかもしれません。

相撲発祥の地はどこ?

全国にはまだまだ知られていない魅力がたくさん眠っているはずです。
私の地元で言えば奈良県の葛城市という町で相撲発祥の地と言われていますが、どれだけの人がこの事を知っているでしょうか?
アピールの方法で相撲ファンはもとより海外からの観光客にも町に興味を持ってもらうきっかけになるのではないでしょうか。
私は現在東京で生活をしていますが、かつて奈良に住んでいた頃はその魅力にあまり気を留めていませんでした。
その場にいると自らの魅力に気付きにくいということが往々にしてあると思います。
ならば地元を離れて暮らす人々と接点を持ち、離れたからこそ見えてくる魅力を一緒に掘り起こすというのも効果的な方法の一つです。

売れない=魅力がない?

地域に古くから伝わる作物や伝統工芸なども他の地域の人から見れば新鮮に映る事も少なくありません。
商品が売り上げに繋がらないのはそこに魅力がないということではなく、見せ方や伝え方が十分でないが故にそもそも届いていないということもあります。
そんな場合には商品のパッケージを変えるだけでも大きく売り上げが変わるということもあります。
あるいはネット販売ならサイトの情報を整理したり、ユーザーの目につく場所にキービジュアルを置くなどすることで購入率が大きく変化したりします。
もともと価値のあるものだからこそ、丁寧に、適切な方法で伝えることで地域は活力を取り戻すことができるはずです。
豊かな資源や高い技術を持ちながらも、その魅力をうまく伝えきれていないという街や企業は、
一度デザイン視点を開発に活用してみてはいかがでしょうか。